2023年10月の第1回総会でも議論され、以前から懸念されていた「淀川水系におけるイタセンパラの未確認」が、2024年2月7日毎日新聞大阪版により報道されました。『イタセンパラを淀川に泳がせる』を合言葉に淀川の生物多様性を目標として活動しているイタセンネットとしては重大な内容です。
河川事務所や生物多様性センターの対応は明らかになっていませんが、イタセンネットとしては、少なくとも連携団体の皆様に見解を明らかにし、協力の継続を求めなくては、来年度の活動も始められないと思っています。連携団体の皆様も団体周囲の皆様からの問いに説明しなくてはいけないことも多々あると存じます。
運営委員会としては、3月16日開催予定の第2回総会においては連携団体の皆様にご説明し、次年度の活動をすすめて行こうと考えます。ついては、下記の文面を準備しましたので、ご検討ください。
【イタセンネット声明】
今回、イタセンパラが未確認に至った要因について以下のような点が考えられる。
1 改修工事による河川の水理環境の変化がもたらしているワンド環境の劣化の進行
・ 洪水時に起こるワンドの水質環境や底質環境が更新される機会が減少し、それが餌環境の変化や産卵母貝の減少を招いている。
(底面の泥質化、周辺の樹林・植生、沈水・浮葉植物などの繁茂と枯死による底面への有機物負荷がもたらす嫌気化などが進行している)
2 外来生物による圧力の増大
・ 魚食性外来魚(オオクチバスやブルーギル等)による捕食圧の増大。
(オオクチバス、ブルーギルについては外来魚駆除活動による低密度管理が続いているが、最近は淀川へのコクチバスやチャネルキャットフィッシュの侵入による影響が懸念される)
・ 水草類の過剰繁茂による水中への光阻害がもたらす水質の貧酸素化や有機物堆積量の増大による底質の嫌気化。
・ ヌートリアの大量捕食によるタナゴ類の産卵床となる二枚貝の減少。
3 地球温暖化の影響が顕在化してきている可能性
・ 貝内仔魚の越冬期における低温要求条件を満たさない年がある懸念がある(一例として)
イタセンパラの未確認の要因特定には至ってはいないが、これらの要因が複合的に作用している可能性も十分に考えられ、今後の専門家による検討を待ちたい。
一方で、2013年の再導入後、一時は2万尾を超える仔稚魚の浮出を始めとして、9回の自然繁殖が確認されたことは大きく評価される。しかし、再導入の際に目標とされた淀川の多くの水域におけるイタセンパラの継続的生息は10年間かけても達成されなかった。淀川の河川環境の再生を図るうえでその指標としてのイタセンパラの生息は外せず、イタセンネットとしては生息環境の再生のための努力を続けて行く予定であり、複数の水域におけるワンドの水理環境の改善/劣化の回復、負の影響を与えていると考えられる外来種の駆除等を行い、それらの複数水域におけるイタセンパラの再導入と継続的生息を目指して活動を続けて行きたい。
イタセンネットとしては、学会等とも協力し、イタセンパラの再々導入に向けて、淀川河川事務所、生物多様性センターに働きかけるとともに、支援する。
以上